2週間前、高瀬川では結局ボウズで終わった。梅雨入り前の最後の釣行はどこにしようかと考えたが、車載承認証を受け取るために、日田漁協に立ち寄る必要もあった。日田漁協は大山川の河岸にあり、梅野川へ行く途中でも立ち寄れる。しかし、高瀬川がボウズのままでは負けた気がして気持ちが悪い。水位も下がってコンディションも良さそうな高瀬川へのリベンジ釣行に決めた。
金曜日に電話して日曜日の朝に行きますと伝えていた日田漁協に立ち寄ると、封筒には車載承認証に加えて高瀬川の入渓ポイントや注意事項が記された非公式釣り場マップも添えてあった。高瀬川は谷底を流れるような流程で、道路からの入渓・退渓ポイントを見つけるのにいつも苦労していた。漁協のIさん、ありがとうございます!
まずはボウズからの解放
高瀬川リベンジなので、一通り釣り上がるつもりで下流から8時に入渓。河原の砂には足跡だらけ。今日のものだとすれば、ルアーマンか餌釣り師か。いずれにしてもシビアなことは容易に想像がつく。フライは何を結ぶか?メイフライやストーンフライの姿は見えないが、ミッジがチラホラ。なんだかぼんやりしたシルエットのフライが良いかと、#16のCDCカディスを結ぶ。すると、入渓してすぐに瀬の流れの岩裏のよどみの小さなポイントから10cmほどのヤマメがフライを咥えた。これでボウズの呪縛からは解放された。その後も竿抜けの浅い流れで、5寸のヤマメが出た。
一方、いかにもというプールや緩く少し深みがある流れでは全く反応無し。時折底の方に魚影が見える。やはり毎日多くの釣り人が竿を出しているので、ちょっとやそっとでは出てくれそうにない。
それでも、最初の堰堤では浅い流れの石の陰ででライズが。しかし残念ながらバラし。時刻は10時少し前。ヤマメの活性が上がってきたか。
激戦区でどう釣果を上げるか?
予定していた退渓ポイントまで釣り上がると、ルアーマンが座っていた。先行者かと思って声をかけると、これから入渓しようと降りてきたら僕の姿が見えたので待っていたという。「僕はここで一旦上がるのでどうぞ」と返し、暫く情報交換。彼も高瀬川は2回目だということだった。
そこから移動するために流星号に戻ると、前に一台、釣り人の車(車載承認証あり)が停まっていた。僕の後に入渓したのだろうか。こんな具合で毎日入れ替わり立ち替わりで多くの釣り人に攻められているんだな。
次の入渓ポイントに移動すると、やはりそこにも先行者の車が。入・退渓ポイントも限られている激戦区の高瀬川では、先行者がいることを前提で入渓するしかない。ただ、川幅があり水量も多く、流れも変化に富むのでそこら中にヤマメが付きそうなポイントが広がっている。ヤマメがいれば、そのうちに活性も上がって上を向くようになり、フライにも出るはず。持ち帰りが目的の餌釣り師はそろそろ減っているだろうから、特にルアーマンが狙いそうなポイントは飛ばし気味で釣り上がる。
結局この区間でヤマメは出ず、次の入渓ポイントへ移動しそこで少し早い昼食。
地元の人は釣れないと言うけれど
流星号を駐め、入渓ポイントを確認していたら地元の人が歩いていた。僕は地元の人と会うと挨拶をすることにしている。だいたいは釣り竿を見ると釣果を尋ねられ、それをきっかけに川の状況やらなんやらを聞くことができる。その人曰く、「以前は大きなヤマメが泳いでいるのが上からも見えるほどだったが、最近は魚も見えないし、釣れてもこんなちっちゃいのばっかり」と。
流星号に戻ってサンドイッチを食べていると、黒いワンボックスカーが目の前で停まった。先ほどのルアーマンだ。午後の仕事のために帰る所で僕を見つけて停まったようだ。結局ヤマメは釣れなかったと。
彼を見送って川に降りると、やはりそこら中に足跡。フライに出るのはカワムツやアブラハヤばかりだが、明らかに午前中よりも魚の活性は良くなっている。そして目の前に現れたいかにも雰囲気がある、緩やかな流れで適度な深さもありそうなプール。
活性も上がってきたようなので、昼食後はフライをいつものエルクヘアカディスに変更している。このプールでは、まず小さなカワムツがすぐにフライを咥えた。カワムツが先にフライに出るということは、ヤマメは上を見ていないか?ちょっとがっかりしながらフライを数度流れに打ち返した。ゆっくり流れるフライに変化はなく、ちょっと目を横に逸らして再び水面を見るとフライが見えない。慌ててロッドを立てると竿先にいきなり強いテンションがかかった。
ついに大物が喰った!
やった、ついにヤマメが喰ったか!がしかし、竿先に伝わる感触、そして水面下で暴れる魚影がヤマメのそれとはちょっと違う。ローリングも無い。と思った次の瞬間派手にジャンプ!何だ⁉レインボーか?いや、噂に聞くブラウンか?
いずれにしても尺に迫る大物であることは間違いない。バラさないよう、慎重にやりとりをすること数分。
ネットに納まったのはぴったり30cmのブラウントラウト。尺ヤマメではなくてちょっと残念ではあるが、今年初の尺越えのトラウト。しかも自然渓流で正真正銘の天然もの。

フライは上顎にしっかりかかっていた。飲まれていたらティペットを切られていたかもしれない。口元を見ると新しい傷がある。ルアーで削られたのだろうか?このままリリースして良いものか躊躇いながらも元のプールへ戻した。
急にヤマメの活性も上がってきた
このブラウントラウトを境に、次々とヤマメもフライに出るようになった。やはり活性が上がるタイミングだったのだろう。7寸前後のヤマメが次々とフライに出てくる。最大の22cmの雄のヒレピンヤマメは、尾びれも尖り、顔つきも本流ヤマメそのもの。

今年の放流物ではなく、年を越したヤマメだろうか。このまま大きくなれば、夏には8寸~9寸の立派なヤマメに育つだろう。こんなヤマメが釣れるんだから釣り人が多いのも納得できる。
初めての流れを釣り上がるのは、先の様子も退渓点もわからないので本当に疲れる。尺のブラウンもヒレピンのヤマメも釣れた。ちょうど仕事のメールも届いていたので、ちょっと早いけれど2時に納竿。帰宅してPCに向かい一仕事。良い釣果を上げたので仕事もはかどり、いつも通り「世界遺産」からのテレビ前でグラスを傾ける日曜夜のルーティン。安ワインもいつも以上に美味かった!
5月29日追記
漁協に電話して、車載承認証を受け取った連絡とブラウントラウトが釣れた報告をした。ブラウントラウトについては、釣れたらどうしたら良いかと尋ねると、ルアーマンなどはブラウントラウトを目当てに釣りに来る人もいるので、いまのところは駆除などは考えていないという。しかし、いずれは検討しなければならないかもということだった。
僕が釣ったのは30cmだったが、これが40cm、50cmと大きくなれば、高瀬川の生態系にもいずれは影響を与える可能性は高い。実際、秋田の方では駆除に乗り出しているという話もある。釣りの対象魚が増えるのはうれしいが、これ以上の繁殖はしないことを祈るばかりだ。