羽田を定刻に出発し、長い空の旅がスタートした。 ロシアのウクライナ侵攻開始後、日本と欧州を結ぶ航空機はロシア上空を飛べなくなったので大回りをすることになった。ロシアを避ける北回り、あるいは南回りの航路は、どちらになるかは直前までわからないらしい。航路が変更になる度に到着時刻や出発時刻の変更がメールで届いていたのだ。最終的には北回りで、通常よりも約3時間長い15時間半のフライトでフランクフルトへ向かうこととなった。
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夏至を過ぎたばかりの北極圏に入ってからは、窓から左後方にずっと朝日が見えている。一方で、右の雲の上には三日月も輝いている。
生まれて初めて見る氷河は、特別な景色
グリーンランド上空にさしかかると、眼下には氷の大地。島と言うには巨大すぎる一面に広がる白い風景。生まれて初めて目にする氷河と、それが作り出した景色。 海岸線には流氷と言うには大きすぎる氷の塊がたくさん浮いている。
窓からずっと景色を眺めていると、「私たちも普段見ることが無い景色なので、窓の外をつい見ちゃうんですよ」とCAさん。そりゃそうだろう。航空会社からしてみれば、片道3時間も余計に飛ばせばそれだけ燃料も余分に使うわけだから、コスト増は半端じゃない。12時間が15時間になったということは、単純に25%増。そんなコストが掛かる遠回りな航路を飛ばすことはない。それだけ特別なことなのだ。
さすがに15時間半はワインを飲み続けるのにも、映画を見続けるのにも長すぎる。珍しく途中睡眠を取りながらのフライト。そして、食事もとても中途半端。離陸直後に夕食は普通なのだが、到着は現地時間の早朝5時すぎ。到着前の食事は朝食という案内ではなく軽い食事。朝食にしては重いし、朝から食べるようなメニューでもない半端なものだった。提供する時刻が3時とか4時で早朝とはいえ、窓の外はずっと明るいんだから、個人的には気分を切り替えるべく朝食を提供して欲しかった。
フランクフルト国際空港は多くの人でごった返していた
早朝の5時過ぎにほぼ定刻通りにフランクフルトに到着。フランクフルト国際空港も欧州の巨大ハブ空港の一つ。乗り換えのためにパスポートコントロールを経て次のAターミナルを目指す。羽田空港とは打って変わって人でごった返す空港。Aターミナルでも再び長蛇の列に並んで手荷物検査を終え、搭乗口近くのラウンジへ。ナポリ行きの便は16時発。早い便が満席でこれしか取れず、8時間ほどこのラウンジで過ごすことになる。目の前は誘導路で、滑走路とターミナルを行き交う多くの飛行機が通り過ぎていく。日本では見ることが無くなったB747もルフトハンザでは現役でたくさん運用されているのに驚いた。
ガラケーが使えない!
トランジットの空港で過ごす時間が長いことが予めわかっていたので、グローバルWifiもトランジットオプションを付けていた。ラウンジに入った時刻は午前7時前、日本時間では金曜日の午後2時前。たくさん溜まっているメールのチェックや返信をしながら気になる事があり、電話をしようと携帯を取り出すと圏外! iPhoneは繋がって既に現地時刻が表示されているけれど、通話用にメインで使っているガラケーは繋がっていない。ドイツは3Gサービスを終了しているのか!日本でももうすぐ終了するから、通話専用に待ち受け時間が長いスマホを探して機種変更しなければならないな。 まあ、スタッフが対応してくれているので、急いで電話するほどでもない。メールで確認・指示をして一件落着。日本出発前に予約を入れていたPCR検査も、予約確定のメールが届いていた。これで帰国前のPCR検査所を探す手間からは解放された。 搭乗開始までそのままラウンジで過ごした。
搭乗して3時間後になんと!
搭乗時刻が近づきラウンジを出、搭乗口へ。あとはナポリへ向けて飛び立つだけ。搭乗し座席に着いてしばらくすると機内アナウンス。航路途中の天候が悪く、20分ほど離陸を遅らせてこのまま待機するという。見る限り、空港上空はそんな風には見えない。しかし、iPhoneの The Wether Channnel で雨雲レーダーを見ると、確かに南に発達した雨雲が見える。
それから何度も出発を遅らせるアナウンスが続き、雨も降り出した。チョコレートが配られるなどしている間に既に3時間。そしてついにフライトキャンセルのアナウンスが!その後のことは地上係員が対応すると言われて飛行機を降りるとそんな係員の姿はなく、搭乗口のスタッフに尋ねると前の人についていけとだけ。
2時間半並んだ末に放り出される
延々と歩いて着いていくと、たどり着いたのはルフトハンザのサービスセンターのカウンター。 対応する窓口は3つだけなのに数百人の長蛇の列。キャンセルになったのは僕たちの便だけでなく他にも複数になった様子。急いでその列をたどって最後に付く。その後も列は伸び続けるばかり。空港スタッフから配られる水やオレンジジュースを受け取り並ぶこと2時間あまり。ようやくサービスカウンターが見える位置まで進んだ。
ところが、突然カウンターのロールスクリーンが降ろされた!22時で業務終了と言うことらしい。並んでいた客から怒号が起きるがそんなのお構いなし。なんの説明も無い。カウンター前に立っていたスーツ姿のスタッフを取り囲んで詰め寄るが、彼らはセキュリティスタッフなので何もできないし応えられないというばかり。そこに並んでいた数百人の乗客は、文字通り放置状態に。
ホテル手配のカウンターにも長蛇の列
スーツのセキュリティスタッフは取り付く島も無かったが、一人黄色い保安ベストを着た短髪のオジさんが一生懸命に応えようとしていた。自分には何もできないが、航空会社がホテルを手配してくれるはずなのでそこへ案内すると言う。10人ほどが彼に付いてターミナルを出、搭乗手続きカウンターを急遽ホテル手配専用カウンターにした所に案内された。ここにも長蛇の列。
しかし、ここでホテルを手配してもらったところで振り替えの便が手配できるわけではない。案内してくれたオジさんにポケトークを使って質問を繰り返す。
「チケットカウンターが開くのは何時ですか?」 「午前4時過ぎには開くはずです」 「空港ラウンジには入れますか?」 「ラウンジも閉まっているので入れません」
こうなると、このまま空港に留まりチケットカウンターが開く4時にカウンターに並ぶしかないか。
国際電話で日本のANAデスクに
妻と二人、空港のベンチに座り朝を待つ。しかし、そもそもマイレージで手配したチケットだしドイツ語(あるいは英語)で交渉するのでスムーズに進むとは思えない。それよりも、ANAで手配し直してもらう方がきっと確実だ。ネットでドイツの窓口を検索するが見つからない。有っても9時過ぎなければ繋がらないだろう。それなら、国際電話で日本にかけた方が早く解決できる。ANAのデスクは午前8時から電話を受け付ける。ドイツ時間では午前1時。 1時になるや、国際電話で日本のプラチナデスクへ電話をかける。相変わらずなかなか繋がらず3分ほど待ってやっと繋がった。電話口の先のオペレーターに状況を伝え、できるだけ早い便で座席を確保して欲しいと依頼。そのまま待つこと数分で、なんとか最終便が確保できた。 本当ならもっと早い便が望ましいが、それ以前の便は既に満席。チケットカウンターが開くまで待っていれば、下手をすれば翌日の便さえも取れなかったかもしれない。流石は日本の航空会社!顧客ファーストのこの安心感! 加えて、あの空港スタッフのオジさん(恵愛の意を込めて)のおかげで、自分たちが今置かれている状況が冷静に分析できて次の対応策も考えられた。ルフトハンザの冷たく無責任なスタッフだけだったら、この難局は乗り越えられなかったかもしれない。オジさん、有り難う! そのまま、チケットカウンター・チェックインカウンターが開くのを近くのベンチで待つことにし、朝が来るのを待った。
トランジット大混乱編-2日目 につづく