病院を出てから今日までは、痛みと戦いながら記憶を取り戻す、いや記憶の整合性を自ら作り上げてきた日々と言えるのかもしれない。転倒から今日までを振り返る。
DAY2 帰宅して朝を迎える
転倒して救急搬送され、病院で処置を受けて帰宅したのはとうに日付が変わってから。お風呂に入ることはもちろん、服を脱ぐことさえできずに布団に入った。夜中、血(が混じった汁)が顔を伝って流れてくる感触で目が覚めたり、骨折した右親指がズキズキ痛んだりとあまり眠れないままに朝を迎えた。
朝になって起き上がろうとすると、身体のあちこちに異変を感じることとなった。右手は親指が骨折していることはわかっているけど、手首から先に力が入らない。触って痛い所はないけれど、力を入れたり手をついたりすると痛い。転倒した時に手首をひねったのか?
立ち上がって歩き始めると、右足付け根が痛い。足首も腫れている。右足もひねったのか?
顔面の傷はもちろんだが、骨折しているくらいだから鼻の中も出血しているし、口の中も切っていた。一番激しい傷は鼻の下。従って上唇の裏も切れているし下唇も歯に当たって切れていた。顔の左下側は思い切り腫れ上がり、口もまともに開かない。
固形物はほとんど口に入れられないので、牛乳やヨーグルトをストローで飲んで一日過ごした。
DAY3 最初の検診
時間外の救急外来だと次回の予約が取れないので、最短の平日午前中に来院するよう指示されていた。午前中の診療時間は9時~12時に対して受付時間は7時から11時。予約無しで受診するのはそれだけ厳しいのか!といわれても、そんなに早くから準備して出かけるのは身体が追いつかない。なんとか9時前に受付を済ませて名前を呼ばれるのを待つ。
1時間以上待って名前を呼ばれ診察室に入ると、救急処置をした際のデータや申し送り事項を見ながら先生が説明をしてくれる。
「レントゲン写真を見ると親指の骨折は縦に割れている。鼻の骨折は先端部分がちょっとずれているだけなのでこのまま何もせずにくっつくのを待ちましょう。顔面の傷は清潔にしておいた方が良いので、お風呂には入ってください。塗り薬(処方箋)を出すので表面が乾かないようそれを塗っておいてください……」
処方箋の薬と一緒に包帯やガーゼ、絆創膏を購入して帰宅。夜は3日ぶりのお風呂に入るために顔の絆創膏を全て外し、初めて傷の全容を自分の目で確認。上唇が異様に腫れ上がり、このせいで口がひらかないのか。右手は使えないが3日ぶりに頭も身体も洗えてさっぱり。
DAY4 事務所へ出勤
右足を引きずるようにしながら事務所へ。昨年近くに移転していて本当に良かった。事務所に入ってきた僕を見て、スタッフは当然ビックリ。見ただけでは誰かもわからないが、挨拶し発する声は変わらない。事の顛末を説明して仕事を始めるも、顔はなんとなく腫れぼったいし右手は痛いしでPCに向かっていてもボーッとしてしまう。キーボードもまともに打てない。ボーッとした一日を過ごして帰宅。
少し口が開くようになったので、夕食に母が作ってくれた卵雑炊をスプーンで食べていて違和感を感じた。差し歯だった前歯がぐらぐらしている。そういえば、これだけ口の中も切れているし、歯が折れても不思議ではなかった。歯医者にも行かなければならないか……
DAY5 ビデオミーティング
クライアントさんとのビデオミーティングは、声だけの参加よりも良いかと窓を背景に逆光で参加。まっ黒なので顔がどうなっているかは気付かれないままにミーティングは終了した。
DAY6 時計が!
腕時計を見るとずいぶん遅れている。時刻を合わせようと腕から外し、改めて良く見るとガラスに多くの傷が。縁も欠けている。回転ベゼルも動かない。歪んでしまったか?左手には特にケガは無く、何処も痛くないが時計にこれだけの傷があるということは時計が衝撃を受け止めてくれたのか?
DAY7 転倒時を脳内シミュレーション
世間はゴールデンウィークに突入。古湯では本当なら再放流予定だったが、荒天のため順延。生憎の雨ではあるが晴れていても釣りに出かけられるわけでもなく、ただ静かに過ごすのみ。一人静かにしていると、転倒時の状況が気になってくる。記憶には無いが、傷の場所や衣類・持ち物の損傷具合から想像してみる。
顔面の傷は左側のみということは、身体の左側から地面に倒れたのか?しかし、顔以外の左半身はほとんど無傷。ところが、腕時計は傷だらけだし、セーターは左腕に穴が開いている。持っていた傘も柄を持った状態で左側に擦って穴が開いていた。傘はちょうどクッションの役割を果たしたのかもしれない。ということはやはり身体の左側を少し下側にして倒れたのだろう。
一方で、右手親指を骨折し、手首を捻挫したのか指を動かしたり手をついたりすると強烈に痛い。右足首が腫れ上がり歩くと足の付け根が痛い。右足が何か(自分の足?)につっかかり、ひねって転び、とっさに右手で地面に手をついたのではないか。左手は傘を持っていたために上げるのが間に合わずに腕を下に倒れたと想像する。
あるいは、右足をひねって右側から崩れ落ちそうになり、咄嗟に右手をついたために左顔面から路面に落ちたか。
前後の記憶が無いので、転倒はお酒のせいなのか、それとも脳に異常があってなのか不安だった。こうやって自分なりに分析すると身体は咄嗟に反応しているようだし、やっぱりお酒のせいで転倒したのだろうと自分で勝手に結論づけてみる。
DAY8 古湯の再放流
天気も回復し、古湯ではヤマメが再放流され釣り人で賑わっているのだろう。梅野川や背振の方はまだ増水が治まっていないかもしれない。右手の痛みも少し治まり、キーボードがなんとかたたけるようになってきた。今日出かけるとしたら古湯だったな、と青空を見上げ、PCに向かって遅れていた原稿をなんとか仕上げた。
DAY9 抜糸
左目の上下の傷を縫合していた糸を抜く。右手親指のレントゲンを撮り骨の具合を確認。概ね経過は良好とのこと。引き続き患部を清潔に保ち、親指は添え木をして生活するようにと。しかし、顔の絆創膏は鼻の下の傷(ここが一番酷い)以外はほぼ薬を塗るだけで良い状況に。マスクをすれば、傷跡は見えるもののほぼ普通に戻った感じ。
最後の釣行が4月10日の玉島川だったので、既に1カ月近く川に足を運べていない。親指の骨がくっつくのは今月末くらいということなので、更に1カ月はお預け。ヤマメ釣りに一番良い季節なのに残念ではあるが、これもしかたがない。
暫くは、録画してある釣りビジョンとYouTubeを見ながらイメージトレーニングを続けることにしよう。