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2013.06.22

ビジネスとしてのメディアとジャーナリズムの葛藤

6月21日朝、辛坊治郎さんと岩本光弘さんの乗るヨットが浸水し、救助を求めてきた。日本から遙か1200kmも離れた太平洋のど真ん中。二人はライフラフトに移り、漂流しているところを海上自衛隊のUS2に、日没直前に救助された。
波が高く、世界一の性能を誇る新明和のUS2でさえ、一度目は着水を断念し引き返したという。2度目は、日没前になんとか救助をという決死の着水だったのだろう。4機あるあるエンジンのうちの1機は水を被って止まり、救助後の離水に際してはエンジンを洗浄して再始動したという。しかし、そのエンジンも帰路再び停止したようで、厚木基地に戻ったUS2の映像を見ると1機プロペラが止まったままだった。どれだけ過酷な状況での救助活動だったかがうかがえる。

厚木基地での会見では、ヨットを放棄するまでの事故当時の状況を語り、海上保安庁・海上自衛隊他関係者への感謝の言葉を口にした。僕も、ヨットで2度救助された(とは言っても内海ではあるが)経験があるので、その時の気持ちはよくわかる。長時間水の中にいて、体温が下がっていくのを自分で認識し、このまま自分は……と意識した瞬間のことは今でも忘れない。
救助された辛坊さんは、飛行艇の中で隊員に名前を尋ねたら教えられないと言われ、代わりにワッペンを渡されたそうだ。そのワッペンを会見中も大事に持っていたという。

会見からうかがい知れる状況では、早期の艇体放棄とライフラフトへの移乗、救助要請は正しかった。辛坊さんが言うように、一番大事なことは2人が無事に生きて帰ること。冷静な判断といえる。

東京で深夜に行われた会見は、日本テレビ系列のニュースZEROがほんの少しだけ流したが、僕が確認できた限りでは他で流されることは無かったようだ。厚木基地での会見を流したから、それで十分ということか。また、辛坊さんが読売テレビのキャスターだったということもあるだろう。もっと言えば、事故発生から救助までが早いうえに無事だったことが「ニュース性に乏しい」と判断されたと言うことかもしれない。テレビではなく、活字メディアのための会見だったとも言える。確かに、一般人のセイラーによる同じ事故であれば、もっと扱いは小さかっただろうし、そんな深夜に慌てて会見する必要もなかった。

辛坊さんは「正直、今後、どの面下げてという思いはする。そういう意味では自らを省みる時間がいるだろう。今後の仕事は白紙」と話しているという。「救助された」という当事者だから伝えられる現場の体験も伝えて欲しかったが、ウェイクアップ+への復帰も当面なさそうで残念だ。

そして今日、録画したまま時間が無くて見られなかったドキュメンタリー「シャッター」を、やっと見ることができた。イラク戦争の取材を終え帰国の途に着くはずだった毎日新聞の報道カメラマン五味宏基氏。クラスター爆弾の子爆弾を、それとは知らずに拾い鞄に入れ空港で手荷物検査。そこで爆弾が爆発、死傷者を出した。2003年5月1日に起きたこの爆弾事件から、その後の失われた10年を追ったドキュメンタリー。手がけたのは,五味氏と毎日新聞に同期入社し、今はRKB毎日放送局に在籍する神戸氏。同期で五味氏を良く知る間柄だからこその視点と引き出せた言葉、映像。ドキュメンタリーを通して伝えたかったメッセージとは。

恐らくは、彼が目指したのはもっとシンプルなメッセージを伝える、シンプルな構成だったのではないか。しかし、今時、外注ではなく放送局が自社で、長期取材を必要とするドキュメンタリー番組を手がけることは非常に難しい。制作費を捻出し、それを放送するためにはそれなりの理由が必要だったはず。その背景が何となく透けて見える部分もあった。「シャッター」の中で、中東の危険地帯でボランティア活動を続ける高遠さんが、鋭いコメントをしている。
イラクの現状・劣化ウラン弾の問題をメディアに訴えて言われたのが、「イラクは賞味期限が切れているから」という言葉。それに対し、神戸氏自ら「もっとも痛いところを突かれた、と思った」とナレーションが入る。
これは恐らく、神戸氏自身がメディアに対して突きつけたかった言葉ではないだろうか。それを高遠氏が代弁してくれた。神戸氏は、渡りに船とばかりに高遠氏のコメントを挿入したに違いない。
しかし、このドキュメンタリーの本質はここではないので、実際に見てメッセージを受け取って欲しい。

インターネットの普及と共に、報道のビジネス的な価値が変わり、あらゆる既存メディアに(それはネットでさえ)求められるコンテンツが変わってきた。行き着く先は「007 トゥモロー ネバー ダイ」のカーヴァー?
はたして誰がジャーナリズムを殺そうとしているのだろうか?

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